「ゴールドマンサックス」を名乗る偽金融会社が中国で「営業」

 中国に溢れる偽物。ルイ・ヴィトンの新製品は翌日に中国で偽物が出回る。ローレックスの時計は、本物と偽物の区別がつかない。以下、エルメス、グッチ、フェルガモ等々。日本製もホンダの偽物バイクが市場を席巻していた。資生堂化粧品は対面販売でないと、販売しない方法をとっている。


 しかし偽物天国である中国でも、「これには驚いた。まるで町中に偽の『交番』が建ったようなもの」と喩えるメディアが多い。なにかと言えば、「ゴールドマンサックス」と同じ会社名、同じロゴを用いた金融会社が深センで営業を開始していたのだ。ゴールドマンサックスといえば、世界一の投資銀行。その歴代会長からルービン、ポールソンらが政権入りし、財務長官を務めた。


 深センのビジネスパークで2013年3月から営業する、この偽銀行は「ゴールドマンサックス(深セン)金融、リース公司」といい、ウェッブサイトでは「市内最大の金融グループ」と自らを紹介している。『サウスチャイナ・モーニングポスト』の記者が電話で問い合わせると、「うちは米国の銀行と(名前は同じですが)、何の関係もありません」と平然と答えた。その直後から同社ウェッブサイトは繋がらなくなった。


 かつて山東省で「中国建設銀行」を同じ名前の「支店」を開設し、カードも本物そっくりなATMカードを発行していた男がいた。主犯格は逮捕された。


 マイケル・ジョーダンは有名なバスケット選手だが、彼の名前を冠したスポーツウェアが中国で勝手に生産された。


 「くれよんしんちゃん」は先に商標登録をした中国人がどんどん海賊版を印刷していた。数年がかりの裁判で、ようやく版元の双葉社が勝訴したが、後の祭りだった。


 アップルは同じiフォンを偽物の商標に使われたため、6000万ドルを費やして、偽物の販売を止めさせた。


 つまり中国の法律では商標登録は先願主義のため、有名ブランドは片っ端から先に登録した方が勝ち、そして株式でグリーンメーラーがいるように、登録したものを本物に高く売りつけるという、阿漕な闇ビジネスも盛んなのである。


 ブラックメールに引っかけたグリーンメールとは、M&A(企業合併、買収)の一手段で、相手企業の株式を買い集め、高値で買い戻させる投資戦術。これは欧米ばかりか、日本でも合法である。


 さて、政治力の強いゴールドマンサックスは中国の偽会社にいかなる法的手段を用いるだろうか?

(「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成27年(2015)8月28日(金曜日)通算第4639号から転用)


 中国でゴールドマンサックスの偽会社が登場したそうです。全く知的財産権の観念がないとは感じていましたが、さすがにこれはやり過ぎでは・・・